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【TED】ジェームズ・B・グラットフェルダー 「世界をコントロールしているのは誰か?」

私的要約:

 今回も要約は割愛。感想内で充分話の内容へ要約的に記述していると思われます。

感想:

 「複雑系」の研究者と聞くと、自身も遠からぬ理論体系出自であるため、特別な感慨を覚えざるを得ない。「創発」などといったキーワードは、「社会システム理論」や「オートポイエーシス」といった理論を背景に持っている私にすれば、まさにホームグラウンドになるはずであった(今は会社員をしています)。

 しかし、著者のネットワーク分析、複雑系的な観点からの経済分析の結果は非常に興味深いものだ。

 第一点目に、多国籍企業の支配力は0.1%の株主に非常に偏っており、さらにその1割以下に多国籍企業全体の40%を支配可能な支配力が固まっていると分析できるということ。
 第二点目に、そのような支配力の偏りは、集中した支配力の中にある種のバグが生じた時の影響力が大きいことを示しており、リスクの高い経済システムであるということが示唆できるということ。

 二点目については、バグが生じた際のリスクは確かに大きいが、その際に生じうる「システム」そのものの自己組織的な再組織化がどのように働くか次第で、かなりの揺らぎが生じると思うので、想定される一般的なリスクよりは結局低い影響に留まると思うというのが私見なので、そこまで意識する必要はないように思える。

 しかし一つの観点から提示された分析でしかないのだが、第一点目の指摘のように、そこまで偏りがあるように分析されうる現在の(分析対象を多国籍企業に絞ったとはいえ)経済システムは、世界全体としてそれが平等や公平と呼ばれるものでは全くなく、市場の自由によって価格均衡が実現されるような世界ではないことを端的に示してはいるだろう。もちろん、世界が平等や公平であるべき、などという陳腐な固定観念を排しても、偏りがあるという事実は知っておく価値がある。

 要するに、一部のエリートの(ある程度)意のままに操られるのが世界の実情ではないか、というようなありきたりな疑問を確信に変えてくれる力のある分析結果のように思える。
 もちろん話者の言うように、それは「システム」の「創発」現象としてシミュレートできたため、フリーメーソンなどのような陰謀論が真実であるということを意味している訳ではないが。

 ともあれ、非常に面白い分析結果だなぁと思いました。

参考

元になっている論文
The Network of Global Corporate Control